黒大豆(クロダマル)

学名Glycine max
英名Soy bean
科名・属マメ科・ダイズ属
使用部位種子

概要

ダイズの原型と考えられる植物はつるまめと言われ、今でも中国の東北部に自生しているそうです。
このことから、ダイズの原産地は中国東北部からシベリアあたりであるとされています。
紀元前400年ごろには中国全域で栽培されていたと考えられ、日本には、縄文時代に朝鮮半島を経由して伝来したものと推定されています。
『古事記』や『日本書紀』にもダイズの記述があり、五穀のうちの一つとして古くから重要な食物でした。
中国の医薬の古典『本草綱目』には、ダイズのことが次のように説明されています。
「黒大豆は烏からす豆といい、薬として用い食用にもしていました。
大豆は、形の大・中・小、黄色・白色・黒色・緑色など、とてもたくさんの種類があります。
日本では、黄色い大豆「黄大豆(キダイズ)」のことを主に「大豆」と言い、形の大きい大粒種が昔から多く栽培されてきました。

大粒種煮豆など、そのまま料理によく使われます。
中粒種豆腐、味噌、醤油などの加工品によく使われます。
小粒種主に納豆に使われます。

生体調節機能

タンパク質には、必須アミノ酸が含まれ、特にリジンが多く、メチオニンやシスチンは少なめです。
コレステロールが腸管から吸収される時に必要な胆汁酸とダイズタンパク質が結合し、胆汁酸の再吸収が阻害され、結果としてコレステロールから胆汁酸へ変化が促進されるので血中のコレステロールが低下します。
また、ダイズペプチドを与えると皮下脂肪を効果的に燃焼させるので、肥満にも良い影響を与えます。
大豆グロブリンは、高コレステロールの人の総コレステロールやLDLコレステ ロールを低下させ、正常な人のコレス テロールは下げません。
タンパク質が分解してできるアミノ酸のセリルトリプトファンが血圧上昇を抑制することが報告されています。
その他、大豆タンパク質は高血圧症の血管障害の予防や胆石の抑制作用、インシュリン反応増強作用などが研究されています。
ダイズに含まれる少糖類を総称して大豆オリゴ糖と言っていますが、スタキオースやラフィノースが主成分です。
これらが人の腸内細菌の有用菌(乳酸菌、ビヒズス菌など)を増殖させ、逆に有害菌を減少させますので整腸作用があります。
話題になっている大豆イソフラボンは、血中コレス テロール値の改善作用、細胞のガン化抑制(チロシンキ ナーゼ抑制作用)、骨粗鬆症の緩和、女性の更年期障害の軽減、抗酸化作用などがあるといわれています。
さらに 大豆食物繊維も整腸作用や大腸がん発生抑制に寄与していると考えられています。

含有成分

イソフラボン(ダイゼイン、ゲニステイン、*それぞれ配糖体ダイシン、配糖体ゲニスチンのアグリコン)、アントシアニン、黒大豆ポリフェノールの一種プロアントシアニジン、サポニン、レシチン、コリン、タンパク質、フィトステロール(β-シトステロールなど)、リグニン類、オリゴ糖、油脂、ビタミン(Eなど)、ミネラル(カルシウムなど)

クロダマル(黒大豆の品種名の一つ)とは

クロダマルは、母方が坂上2号・父方が新丹波の交配種された黒大豆です。
外観上の品質は「新丹波黒」より優れ、アントシアニン含有量が「新丹波黒」より多く、抗酸化活性を示すDPPH消去活性も「新丹波黒」よりも約4倍高いデータが得られています。

主要成分の説明

黒大豆ポリフェノール

黒大豆の特徴である黒い皮。
その皮に含まれる黒大豆ポリフェノールは抗酸化作用により老化防止・血流の改善・血圧の抑制などの効果をもたらします。
また、最近の研究により、内臓脂肪を減らし高血糖を抑えるなど抗メタボ効果があることも明らかとなっています。

イソフラボン

イソフラボン類はポリフェノールの分類のひとつで、イソフラボンを基本骨格とするフラボノイドである。
ダイズ、クズなどのマメ科の植物に多く含まれている。
ゲニステイン、ダイゼインなどのイソフラボンはエストロゲン(女性ホルモン)様の作用を有し、更年期障害、骨粗しょう症や乳がんの予防に効果があると言われています。
また、体脂肪量の低減効果や血中脂質の改善効果などの研究結果も報告されています。

イソフラボンゲニステインダイゼイン
化学式C18H24O2C15H10O5C15H10O4
分子量272.38270.24254.23
融点148℃315-323℃(分解)
外観無色固体淡黄色結晶

大豆(黒大豆)に含まれる抗酸化物質

ゲニステインは、多くの他のイソフラボンと同様に抗酸化物質として作用し、組織中でフリーラジカルの損傷作用を弱めている。
ダイゼイン(英: daidzein)は、イソフラボンの一種。
ダイゼインやゲニステインのような他のイソフラボン化合物は、タイのプエラリア、クズのような植物やハーブに存在しており、ダイズや豆腐や植物性タンパク質大豆製品のような食品にも存在している。
大豆イソフラボンは、ダイズから発見され抽出された化合物群である。
抗酸化作用に加えて、多くのイソフラボンは、動物とヒトのエストロゲン受容体に作用することが知られており、それゆえフィトエストロゲンとして知られている。
大豆イソフラボンは、非ホルモン作用も有する。

レシチン・コリン

あらゆる細胞の新陳代謝に不可欠なレシチン。
このレシチンから生成されるコリンは脳の情報伝達物質の材料であり、脳を活性化し記憶力や集中力を高めるなどの健脳効果を期待されている成分です。

たんぱく質

大豆は肉と同じくたんぱく質が豊富に含まれることで有名です。
しかも、大豆のたんぱく質は、必須アミノ酸9種をバランスよく含んでおり、理想的な栄養価を持つといえます。
また、大豆たんぱく質は、血中コレステロールを下げる働きがあるため動脈硬化や高血圧の予防効果が期待でき、トクホ(特定保健用食品)の機能成分として認可されています。

ミネラル

カリウムなどのミネラル黒大豆は植物の中でもカルシウムやカリウム、鉄分といった生理機能に重要なミネラルを豊富に含んでいることでも有名です。
鉄分にはほうれん草の約2倍の含有量。
また、老廃物の排出を促し、むくみをとる作用で知られるカリウムも豊富に含まれています。

食物繊維

食生活の欧米化に伴い、摂取量が年々、減少傾向にあるといわれている食物繊維。
余分な脂肪や老廃物を体外に排出し、便秘解消にも効果的な成分です。
黒大豆には不溶性食物繊維が豊富に含まれておりデトックス効果も期待できます。

オリゴ糖

黒大豆には、ラフィノース、スタキオースなどのオリゴ糖が含まれています。
これらのオリゴ糖は、ビフィズス菌などの腸内善玉細菌の活性化作用を持つことや、虫歯の原因になりにくいこと、低カロリーであることなどが知られています。

ビタミンB群、ビタミンE

糖や脂質、アミノ酸やたんぱく質の代謝に補酵素として働き、エネルギーの産生や細胞を作るといったことに関わっているのがビタミンB群。
また、活性酸素によるストレスから生体を防御し、ポリフェノールなどと互いに補い合うことで、より高い抗酸化作用を示すビタミンE。黒大豆には、この2つの栄養素が豊富に含まれています。

ビタミンB1、ビタミンB2は、「脚気予防・成長促進・便秘の改善」にも有効とされています。
ビタミンEは、ホルモンバランスを整える働きと過酸化脂質の減少をもたらす働きがあり、「老化防止」に薬効があるといわれています。

サポニン

過酸化脂質や悪玉コレステロールを低下させ、血液をサラサラにする作用があります。
「高血圧・高脂血症・がん・肥満」の予防に薬効があるといわれています。

その他

加工食品としては、きな粉・煎り豆・納豆・豆腐など一般的な大豆と同じく各種あるが、特に黒豆で見られるものとして下記が挙げられる。

  • 煮豆 おせち料理には欠かせない。
  • 黒豆ココア
  • 黒豆コーヒー
  • 黒豆茶(茶外茶の一種)
  • 黒豆ジャム(餡)
  • 黒豆甘納豆
  • 黒豆醤油の実

[ 文献 ]
1)メディカルハーブの事典
2)イソフラボン – Wikipedia
3)衛研ニュース「薬になる植物 大豆」
4)September 10, 2004 THE EIKEN NEWS No.133
5)Black soybeans have been used as an excellent dietary source for disease prevention and health promotion in China for hundreds of years
6)HISTRY OF WHOLE DRY SOYBENS, USED AS BEANS,OR GROUND,MASHED OR FLAKEED (240BVE TO 2031)
7)Provisional chapter Soybean and Isoflavones – From Farm to Fork
8)九州沖縄農業研究センター
9)17農会第1182号 平成17年11月30日 大豆における遺伝子組み換え技術利用の現状について